清流荘プロジェクト

使われていない行政の建物をホテルとして利活用。
そのホテルリノベーションを「教材」にして、
「DIYスキル」を宿泊しながら学ぶプロジェクト




〈 現在の進行状況 〉

行政の建物を利用できるようにするため、
行政側と交渉調整中 ...











プロジェクトまでのエピソード






まずは、このプロジェクトが生まれる9ヶ月前にさかのぼる。


 

 

 

エピソード0 【  舘山寺を考える  】

 

2017新年。

三ヶ日の蕎麦屋さんに食事に出かけた後、帰りに愛犬ワカメと散歩するためにフラッと舘山寺へ。

舘山寺

舘山寺とは、浜松の昔ながらの観光地である。

お正月ということもあって、遊園地には沢山のファミリーが遊んでいた。

キャーキャーと子供たちがはしゃぎ、どの乗り物にも10人以上の行列が並んでいる。

なんだか、幸せな光景を見た感じがした。

舘山寺パルパル

これは個人的なイメージだが、

お正月、GW、お盆、夏休みと、長期休暇というタイミングには、沢山の人で溢れていると思うが、

年間を通して考えると、それほど賑わいを感じる観光地には思えない。

しかし、まだたくさんの大きなホテルが存在しているし、それを見事に経営し継続している。

 

だけど、舘山寺に来る時は、いつも平日だったので、閑散とした街に見えていた。

立派なホテルや旅館があるが、商店街的な通りはシャッター店が多い。

チラホラと散策している観光客はいるが、行き先があるのか…ないのか…

その姿は観光難民のようにも見えた。

 

 

 

 

だが、改めて考えてみた。

舘山寺には、遊園地があったり、動物園があったり、植物園があったり、ロープウェイがあったり。

湖には、スピードボートなどのマリンスポーツや、遊覧船があったり。

結構、観光地としては楽しむソフトが揃っている。

 

地元に住んでいるから、あんまり意識して考えたことがなかったが、観光として、良い素材が揃っているような気がする。

 

 

 

 

そんなことを考えながら歩いていると、1件の閉館したホテルを発見した。

調べてみると「喜楽」という元旅館。

この立体的な建物にグッと心が揺れた。

次の瞬間「あそこをこうするでしょ。ここをこうするでしょ。」と。

リノベーション病がうずうずと動き出す。

去年行った  兵庫の赤穂の「今井荘」。

あそこに行ってから、「旅館」って言葉に 妙に敏感になっている気がする。

廃ホテル
廃ホテル
廃ホテル

建物の裏側はすぐ湖。

裏側の1階は、ガラス張りになっていて、湖が目の前に広がって見える。

 

建物も素敵だが、このレイクビューの景色も最高。

丁度、島と島の重なりで奥行きのある景色。

どことなく去年行った瀬戸内の景色にも似ている。

 

 

裏側から建物の中をのぞいてみると、可愛い天童木工のチェアが。余計に気になる。

この旅館の建物の中をぜひ見てみたい!!

舘山寺
廃ホテル

もし、アパートメントが旅館をやったら… と、一気に妄想が広がる。

やはり、アンティークやレトロがベースになる。

建物も、今のアパートメントの店舗と同じ鉄筋コンクリート造。

なるべく躯体の素材感を活かした内装に。

ローコストにするために、できるだけ自分たちの力で作りたい。

というか自分たちでやって楽しみたい。

この規模のサイズだと、どれくらいの期間や予算で出来るか まだ分からないが、不安よりもワクワクが前に来てしまう。

部屋ごとに インテリアコンセプトを変えたり、カフェを作ったり、家具屋を移転したり、賃貸の住居やオフィスをいれたり。

なんだか、考えがまとまらないが、色々な可能性を感じる。

もうこれは、自分たちでだけではできない。

共に人生をかけてくれる人材が必要だ。

 

 

 

帰りにそんな目線で、舘山寺の街を見直してみた。

遊園地は、時が止まった感じのデザインがノスタルジックな雰囲気に見え、逆に格好良い。

商店街の空き店舗にも、カッコいい感じの店舗が。

舘山寺商店街

空き店舗があると言うことは、新しいお店が増える可能性があるということ。

今のアパートメントの近辺は、空き店舗がない。

街視点でみれば、点止まり。

2店舗3店舗とどんどんお店が増えれば、点が線になり 面になって「街」になる。

 

「可能性」を感じずにはいられない。

 

 

次の一歩に進めるのか? 思考の日々が始まりそうだ。









エピソード1  【  「 舘山寺を考える 」からその後  】

 

「エピソード0」を書いた後、舘山寺をもっと良く知る為に、何度か舘山寺を散策しに行った。

うどん屋さんで商店会の話を聞いたり、裏山でミニハイキングをしたり、名物料理を食べたり、温泉に入ったり。

焦る気持ちを抑えられずに、写真を合成で外観パースを描いてみたり。

ホテル
ホテル

そんなある日、廃墟だと思っていた旅館内に作業服姿の人影が!

「お!これは建物内が見れるかもしれない!!」早速、声を掛けてみることに!

 

 

 

しかし、かなり怪しまれた表情をされながら、

「今は、事務所と資材置場で使っていますが..」と、すごく冷たい対応で… 

まあ無理もない…

なので、結局、旅館内は見れず。

その後、色々調べた結果、廃墟だと思っていた旅館は、大きな病院のグループ会社が所有していた。

多分、その会社の社員だったのだと思う。

この日を境に、この物件での脳内妄想は終わった… 

 

 

 

ありがたいことに、そんなこと考えている暇もなく、その後リノベーションの仕事が続き、気付くと夏。

 

 

 

そして、仕事が落ち着くと顔を出すのが「モヤモヤ病」。

モヤモヤ病の薬は、とにかく考えること。

完治することはないが、少しのヒントがあれば、頭の中でそれを膨らませる。

そして、壁にぶつかり割れる。 この繰り返し。

 

しかし、今年の夏は違った。

とりあえず、ヒント自体をさがしに動いてみよう!と、ふと決意!

 

先日、ブログでも本を紹介した長野諏訪にあるRebilding Center JAPAN。

そこでは「サポーターズ」という企画がある。

自分たちの店舗の改装や、廃材のレスキュー現場などを、ボランティアで手伝ってくれる方を募集 するのだ。

 そのサポーターズの企画が たまたまあり、モヤモヤした日を送っていた自分は、息抜きと 何かヒントがあるかも?と、1泊2日で参加することに!

 

このサポーターズに参加することを弟に話すと「珍しいね!」と言われてしまう程、僕は勉強会やイベントなどには、ほとんど参加しない。

普通、勉強会やイベントに参加することは、それほどのことではないが、自分にとっては大きな行動だった。

 

この先に話を進める前に「Rebilding Center JAPAN」とは、どういった場所で、どういった想いで出来たのかをお話したいと思う。

 

 

【Rebilding Center JAPAN】 長野諏訪 

一言でいうと「古材や古家具雑貨のリサイクルショップ」。

ですが、単純に古材を集めて販売するのではない。

 

古い街の木造住宅は、今建て替え時期にきている。

不便な古い家を壊し、過ごしやすくするために新しい家を建てる。

古い家の使わない家具や建具、床材や梁材などは解体され、ただのゴミになり、捨てられていく。

しかし、その壊されていく家すべてに、小さな頃から住んだ家族の思い出がたくさん詰まっている。

壊されてくときの「淋しい気持ち」を、少しでも救い上げ、次の世代に繋げていくことは出来ないか?

という考えから生まれたのが「Rebilding Center JAPAN」。

解体され壊される前に、Rebilding Centerが古材や古家具雑貨をレスキューする。

家族の思い出が詰まった家の柱や梁が、次の世代の人に気に入られて、今度はテーブルになったり、室内装飾になったり。

そこに、また新しい価値が生まれ、さらに長い年月大切に使われていく。

そのサイクルを実現するために、レスキューされた古材を利用した店舗デザインや、レスキューした 箪笥やソファなどの家具や建具などの販売。

古材を利用した内装のカフェも運営し、古材の使い方や魅力を発信している。

 

古材や家具等は、現金買取の場合もあるが、お礼として「ギフト」をプレゼントをする場合も。

「ギフト」とは、新しい家でも使えるように、レスキューされた古材料を使い、 木皿やテレビ台など家具を制作してプレゼントすること。

新しい家になっても、昔の家の「家族の思い出」をいつも感じられるように。

新しい家具よりも、より愛着の湧く家具として、また長く愛され続ける。

そんなサイクルが、少しでも当たり前の世の中になるように生まれたRebilding Center JAPANなのです。











 

 



エピソード2  【  ヒントの瞬間  】

 

「エピソード1」で紹介したRebilding Center JAPAN。(略してリビセン)

そこで開催される「サポーターズ」というボランティアイベント。

そのイベントに参加することにした! という話が前回までの流れ。

 

 

 

Rebilding Center JAPANは、東野夫婦(アズノ)がスタートさせたお店。

それまでは、medicala(メジカラ)という「店舗デザイン&施工」の夫婦ユニットとして活動。

活動エリアは全国で、依頼のあった地域に3〜4ヶ月住み込みながら、クライアントと東野夫婦と地元工務店と組み、みんなで一緒に作っていくスタイル。

デザインした店舗は、東京台東区蔵前の「nui」や、長野諏訪の「マスヤゲストハウス」、鎌倉の「aiaoi」など、他にも多数。

 

2016年にオープンしたRebilding Center JAPAN。

この店舗を改装するにあたっても、沢山のサポーターズボランティアが参加。

3ヶ月の工事期間の中で、ボランティアに参加した人数は、約500人。

 

 

今回のサポーターズは、ちょうど1周年を迎えるにあたってのサポーターズイベント。

内容は、店舗近くの「社員宅の改装」。

 

自分が参加した日が、改装工事が着工して6日目。

ほとんどの解体が終わり、ここから少しずつ大工作業が始まるタイミングでした。

リノベーション

この日は、自分を含めて参加者は6名。そのうち4名は女性。

ほとんどの人が1泊しながらの作業で、中には2〜3泊の人もいれば、1週間以上 滞在する人も。

 

自分の大工道具を持って行った私は、最初から重宝がられ、もう1人の男の子と一緒に、早速 大工仕事に取りかかることに。

 

周りを見渡すと、他の女の子たちは、タオルを撒いて、マスクをして、汗とホコリまみれながら、解体された木材の運び出しや、釘抜き、掃除などを頑張ってやっていた。

一緒に作業していた男の子は現役の塗装屋さんで、大工経験が多少あったのだが、他の参加者の子たちは、改装経験がない素人さんばかり。

道具も使えないし、作業の仕方も分からないし、教える人もいない。

簡単で単純な作業ばかりをしていた。

 

 

この日は、東野夫妻がたまたまイベント参加のため不在で、リビセンスタッフの女の子が指示を出してくれていた。

彼女も、DIY女子といった感じで、専門的な知識や技術がある訳ではなかったのだが、テキパキと元気よく、みんなに指示を出していた。

 

 

 

しばらくすると、お昼の時間に。

リビセンスタッフの子が、昼の少し前から昼食を用意してくれていた。

 

みんなで、食器やお箸を並べてを用意し配膳する。

その空気感は、どこか懐かしく学生の時のような感覚に戻る感じだった。

 

この日のメニューは、ソーメンと芋の煮物、豆ご飯おにぎりとお漬け物。

お芋や漬け物などは、近所の人からのお裾分けだそう。

汗をかいたからなのか、新鮮な野菜だからなのか、すごく美味しく感じた。

 

しばらくすると、参加者同士の会話になり、何処から来たの?というの会話に。

聞いていると、広島、愛知、大分、長野など、全国各地からみんな参加していた。

 

1時間の休憩後、午後の作業がスタート。

また周りを見渡すと、相変わらず女の子たちは、単純な作業をしていた。

 

 

「遠く諏訪まで来たのに、単純な作業だけじゃもったいないよな…」と、ふと思い、

 

「丸のこや電動ドライバー使ったことある人?」と、みんなに聞いてみた。が、やっぱり経験がない。

「やってみたい人!」って聞くと、みんなが「やってみたい!」と!

 

そこから、流れで「DIY教室」をすることに!

 

 

まずは、廃材をカットしてみる。

最初に「差し金」という定規での「線の引き方や使い方」の説明から始まり、その後、実際に丸のこを触れてもらう。

高速で回る刃物なので、危険なことや注意するところを説明する。

1度危険な使い方をデモンストレーションし、怖さも感じてもらったり。

 

自分で引いたまっすぐな線を、丸のこでゆっくりカットしていく。

細かな指の使い方、目線の位置。

実際に使いながらだからこそ、分かる言葉の意味。

1枚の板を、ゆっくりだがカットできた瞬間、「お〜!」と喜びと感動の声が上がる!

 

その結果、みんなが丸のこで木材をカットすることができるようになり、電動ドライバーでビスも打てるように!

 

経験がないから出来ないだけで、理解しやり方を学び、体験すれば、簡単な大工仕事ができるようになる。

 

そして、そのあとは、劇的に改装工事のスピードが上がった。

 

 

 

そして、2日目。

床下の底が丸見えだった現場は、なんと床の下地組が終わるという快挙を成し遂げた!

ワークショップ

普段のリノベーション業務では、基本「TIME IS MONEY」。

どれだけ効率よく、完成させるか?

それが利益幅にも繋がり、コスト減にも繋がる。

人に教えるという行為は「労力」「時間」「お金」がかかる。

だから、自分は敬遠してきた。

 

しかし、今回のサポーターズ企画はイベントのようなもの。

特に完成ノルマもない。

ゆっくり丁寧に時間をかけて教えても、まったく問題ない。

その敬遠してきた行為は、「仕事の枠」が外れたとたん、とても新鮮で楽しい時間に変わった。

 

丸のこひとつとっても、自分では当たり前にできる作業。

でも、はじめて使う人には、不器用でも使えるようになるだけで、感動が生まれる。

家を解体したり、壁を作ったり、床を作ったり、塗装したり。 すべてのコト、1つ1つ出来ていく過程そのすべてに感動が生まれる。

自分が忘れていた感動を、教えた人を通して、また味わせてもらった気がした。





食事

作業後は、近所の銭湯の大浴場に入り、そのあと、作業したみんなとリビセンスタッフも一緒に、大きなテーブルを囲んで夕食を食べた。

お酒を飲みながら、ようやくお互いの仕事や諏訪にきた理由などを話す。

皆、しっかり諏訪にきた目的があり、
「自分と同じようにヒントを探しに来てる人」
「未来の夢の為に 経験を積みに来てる人」
「日常のサイクルから少しだけ外れてみたかった人」。

日常で交わらない人だからこそ、心から話が出来ることもある。

 

作業スタートのときは、お互いに知っていることは名前だけ。

肩書きを知らずに接する所から始まるということは、お互いタダの人間同士。

「あのひと器用だな」とか「元気な人だな」とか「指示するのうまいな」とか。

自然と人間力が見えてくる。

そこで、新たな自分を発見することもあるかもしれない。

そして、普段の肩書きを脱いだ状態で、出会う出会いは、普段にはない出会い方で、 とても貴重な出会いになり、人生の友人や同士になる可能性も。

同じ興味を持つ者同士、長い人生の中のたった1日を同じタイミングで動き出して、そして出会う。

そんな奇跡のような出会い。

そんな夜もひっくるめて、刺激的な2日間だった。

 

 

 

そして、ハッとする!!

「コレを次のアパートメントの「コンセプト」にできないか!?」

















エピソード3 【  原点を考える  】

 

エピソード2「ヒントの瞬間」から生まれた
「アパートメントストアの次のコンセプト」!!

このコンセプトの軸が決まったとたん、「新しいプロジェクト」の形が浮かび上がってきた!

今までの14年で培ってきた色々な「考え方」や「技術」「人脈」、「家具」「カフェ」「リノベーション」など、それぞれの「点」が繋がり、そして「線」となり、今回の「ヒントの瞬間」で、「面」になった感じがした。

 

このプロジェクトは、今までやってきたことがすべてが詰まっている気がする。

決定的に違うのは「教える」ということと「社会性」が加わること。

 

 

 

今までの自分は、どちらかと言うと「自分中心」に表現し続けてきた。

「自分が良いと思うものを、ひたすら追い求め、それをどうすれば、形にできるか?」

 

25歳で独立し、決定的に経験値が少ない自分。

さらに独学というコンプレックス。

何者でもない自分を、「自分という人間 の確立」をしないといけなかった。

それは、周りの人に対してもだが、どちらかというと自分に対してだ。

ようは、自分と言う人間に自信をもつ必要があった。

だからこそ、やっきになって自分に問い続け「自分らしさ」をデザインやお店で表現し続けた。

 

ある意味、次のプロジェクトへ前進できた理由は、「自分への自信」が少しだけ持てた証なのかもしれない。

 

 

 

 

本題のプロジェクトの話をする前に、このコンセプトに礎になった自分の経験の話をしたいと思う。

自分の人生の中で、進路の選択をするにあたって鍵となった「出会いや気付き」がある。

少し、生い立ちも含めて話したいと思う。

 

 

 

子供の頃、父親が木型の仕事をしていたこともあり、小さい頃から木でよくモノを作っていた。

小学生のころ「自分の部屋」を持つことに憧れ、高校卒業までに、実家内で移動した部屋の数は4部屋。

思いたったように、急に間取りを変えることが多く、効率よく進める為に、1/100のサイズの 平面図を作り、同じく1/100の家具のパーツも作り、移動前に、入念なシュミレーションを するなど よくしていた。

高校は、県西部 唯一のインテリア科のある天竜林業高校へ。

授業では、家具を作ったり、建築を勉強したり、図面を描いたり。

実用的な授業はとてもよかった。

卒業後は、一から家具を作りたく、神奈川県の「秋山木工」へ丁稚修行へ。

やはり、想い描いた社会人生活とは違い、木屑まみれの毎日。

「このままで良いのか?」と自問し、もっとオシャレな生き方がしたいと、アパレルショップへ 勤め出す。

そのとき、木工所の寮生活から一人暮らしをするための費用を稼ぐ為に、3ヶ月短期アルバイトで働いた 長野菅平のホテル。

このホテルとの出会いが、今後の人生を左右した最初の場所。(20歳)

ここでは、オーナー自ら大型重機(ユンボ)に乗り、ホテルの工事を自分たちでやっていた。

レストランを拡張する時は、バイトも一緒になって、解体したり、作ったり、塗装したり。

合掌作りの大きなホールを作るときには、秋山郷まで合掌作りの家を解体しにいって、実際にチェーンソーを使って 加工したりと、色々経験させてもらった。

ここで学んだことは、「家や店舗も 自分で改装や建てたりできるんだ!」ということ。

 


 

 

 【礎のポイント】 
 「未経験」と「1度経験」の大きな差 


壁を壊すという行為は、素人の人にはとても抵抗のある行為で、想像すらできない。
 

なぜか?と考えると、それは壁の中がどうなっているのか分からない。 

そして、壊したら元に戻せるのか?分からない。 

ようは、「分からない」から抵抗が生まれ、想像すらできない。

だけど、1度解体を経験したり、壁作る工程を理解すると、技術的には未熟でも、 「やってやれないことはないだろう」と思えるようになる。

壁を壊すということの想像や想定ができ、選択肢が生まれる。
 

経験が「0→1」になることは、人生の中でとても重要な体験だと思う。 

「1→2」「2→3」と進めることも大切だが、 沢山の「0→1」を持っていることで、人生の転機にさしかかった時「経験からの想像」で、人生の幅を大きくする 対応力に繋がる気がする。

 

 

 

 








 

 

そして24歳のとき、人生で2回目の重要な出会いをする。

「D&DEPERTMENT」というお店だ。

d&department
d&department

【礎のポイント】 
 デザインによる 新しい価値の生み出し方



 このお店は、家具、雑貨、カフェのお店。

「物販+飲食」の複合店舗という、当時では珍しい業態だった。(2002)

でも、衝撃的だったのは、そこではなく、扱っている家具と雑貨。

一般的に流通している新品の家具雑貨ではなく、 自分たちの実家にありそうな昭和40.50年代の中古品。

骨董とかではないので、どちらかと言うと、不要な人には捨てられてしまうもの。

僕より上の年代の方には、実際に使っていたものだろう。

そんな家具や雑貨が、白く塗られたシンプルな空間に、キレイに並べられている。

そして、懐かしさももちろんあるが、そのたたずまいは、どこか新しい価値を感じた。

それは、新しく作り直したとか、塗り直したとかではなく、 デザインの力を使って、ただ「価値の目線」を変えただけ。

その空間に、選ばれて並ぶだけで「新しい価値」が付くのだ。

「必要ない人から、必要な人への橋渡し」に、とてつもない魅力を感じた。

 

 

 

 

 

この店との出会いの2日後、興奮冷めやらぬ中、長野に帰ると、早速 履歴書を書いて送った。

1度も会って話もしていないのに、書類審査で落とされるのは、納得いかないので、絶対面接してほしいと 書いて。

熱量がスゴ過ぎて、この感動を書いた便せん4枚も同封した記憶がある。

希望通り、実際に面接を受けさせてもらった。

結論から言うと「採用連絡」を頂いた。

しかし、諸事情で採用の連絡をもらう間、半年の期間があった。

半年の間に、またお店に伺って、色々お話を聞きに行ったりした。

希望する部署を伝えると「あなたの関わりたい業務になるまでは、10年くらいは勤めないと。」 と言われた。 

最初は、販売員やカフェの店員から。当たり前だ…

もちろん理解はしていたが、実際に10年と言われ考えると、いつかは独立したいと考えていた ので、そうすると、早くても独立は34歳…

悩みに 悩んで悩んで考えた結果、

「地元浜松で自分お店をやろう!!」

と決断する!

 

 

 

 










 

 浜松に戻ってきて最初にはじめたことは、 物件を探すこと。

 最初の頃の物件の探し方は、市内の不動産を巡ったり、インターネットで情報を仕入れたり。
(インターネットは、今程普及していないので、少しだけしか情報が無かった)

実際に、不動産から紹介されるのは「キレイにリフォーム」された物件ばかり。

 

 







 

【礎のポイント】
  低評価にこそ隠れているチャンスと表現の大切さ


自分の理想的な物件は、リフォームされてなくて、少し見捨てられた感じのレトロな建物。

なぜかというと、見捨てられているからこそ、価値がなく、賃料も安い。

そして、改装も自由な場合が多い。

 

だが、そんな物件は、集客率が低い地域にあることが多く、商売向きではない立地が多い。

そんなときに、思い出した言葉。

D&DEPERTMENTのナガオカケンメイさんにお会いした時に質問した内容。

D&DEPERTMENTの店舗自体も(東京大阪の2店舗(当時))、人通りが多い地域ではなかった。 

なぜ?という質問。

返ってきた答えは「そこに自分たちの表現したいことが、表現できる建物があったから」。

「そして、しっかりとその表現ができ、伝えることができれば、人はわざわざ来てくれる」。

 

 

 

そして、探し続けて3ヶ月。

ようやく見つかった店舗物件。 



だが、やはり立地が少し良くない。

メイン通りより1本中に入った所なので、地元の人でないと通らない通り。

そして、お店専用の駐車場がなく、1〜2分歩いた場所に共同駐車場。

 

しかし、元郵便局で奥に蔵が併設している。面白い物件!

店舗内は数年使っていなかったので、少し傷んではいたが、改装自由!

立地よりも、建物重視でこの物件に決断!

この古びた建物が、新しいデザインで改装することで、新しい価値が付く瞬間が面白い!

オープン直後の店内

4年目の店内

4年目の外観

【リノベーション業務への展開】


レトロ家具雑貨の販売の主軸は、インターネット販売と実店舗の販売。

首都圏への販売がメインになるかと思いきや、実際は、実店舗での販売の方が売上げは良かった。

実際に見て触って座れる方が、家具は売れやすいのだと思う。
(県外はさらに送料がかかるので)

だが、ここで少し気になることが。

それは地元の納品先が、実家や賃貸アパートの場合が多いこと。

店舗で素敵にレイアウトされて、少し魔法のかかった家具雑貨が、 納品後、もともと実家にあったんじゃないか?と思ってしまう、見え方になってしまうこと。

照明だったり、他の家具との相性だったり。

お客様本人は、気に入ってくれているので嬉しいのだが、少し気になっていた。




 

そして、たどり着く「解決策」。

それは「空間も一緒に提案すること!」



空間が変わることによって、家具の見え方が大きく変わる。

そして、また家具を買いたくなる。

 

そんなときに頂いたお話が、カフェの改装依頼。

アパートメントの改装アルバムを、お店で見れるようにしてあったのだが、そのアルバムを 見てくれたお客さまからの依頼。

それがはじめての店舗リノベーションの仕事。

自分で作業する術しかなかったので、オーナーさんと2人でコツコツ改装。

それ以降、ゆっくりだが、リノベーション依頼が増え、そして規模も大きく。

自作の改装ではもう出来ず、工務店さんと共に改装をしていく手法に。



 


 

【礎のポイント】 
 直接見ることで得られる知識や技術


それからは、デザインを管理する立場に。

現場に通う中、自分では出来なかった作業を 直接に見ることができ、自分の技術や知識、道具の幅も広がる結果に。

ここでたくさんの「0→1」をたくさん吸収。

そして、2009年に現在の店舗(頭陀寺町)「RC造3階建ミニビル」を購入。(30歳)

延べ8ヶ月の期間、夫婦2人で改装作業し「カフェ」「家具雑貨店」「住居」を完成させる。

今まで覚えた知識や技術、デザインを集結させた店舗に!(2009)

2009年の購入時の外観

リノベーション

建物内の解体後

リノベーション

夫婦二人で作業

リノベーション

白く塗装するだけでいい雰囲気

リノベーション

厨房の給排水工事

厨房小屋の製作

製作は自分たちで作業

リノベーション

3階の住居フロアの工事も自分たちで

〈 頭陀寺店オープンから9年後の姿(2018年) 〉

〈第1期工事〉 1F/ 家具店 ・2F/未改装 ・3F/ 住居 (工事期間:4ヶ月)

〈第2期工事〉 1F/ カフェ&雑貨店 ・2F/家具店 ・3F/ 住居 (工事期間:4ヶ月)

1F 雑貨店

1F カフェ

1F カフェ

厨房

裏庭

2F 昭和レトロ家具店

3F 住居リビング












【次のステージへ。そしてなぜ今なのか?】

 

昭和レトロの家具雑貨を販売するお店としてスタートしたアパートメントストア。

2017の年末で14周年を迎える。

14年前は、カフェや雑貨店も数える程しか無く、アンティークのお店は、骨董以外では ほとんどなかった。

しかし現在、沢山のカフェができ、家具雑貨屋も増え、インテリアデザインも多様化。

インターネット販売やネットオークションも乱立。

大型ショッピングモールも増え、小規模店の小売業は、さらに厳しい状況にある。

 

アパートメントストアの主力である「昭和レトロ」。

大手企業が「エイジング家具雑貨」を商品化しはじめたことで、


「捨てられるモノの視点を変えさせて、新しい価値をつくる」


というコンセプトは、今になると、対象だった「昭和レトロ」が、生産品になってしまい、新しい価値どころか、 流通品の「よく見かけるモノ」に変わってしまった。

 

単純な製造販売な経済成長は、頭打ちな感じがする。

これだけたくさん物に溢れた時代。

これからは、「物より体験」「所有より経験」「生きる意味」「人のつながり」を求める時代になっていくと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピソード4 【  動き出す  】

 

「エピソード3」で、今までの人生を振り返り「原点」を思い返し、そしてヒントが生まれたRebilding Center JAPANでの体験で、すべての点がつながった!

 

 

 

次にやりたいこと!!

 

 

 

「宿泊型リアルワークショップ」をやりたい!!!

 

実際の改装現場でのリアルな工事ワークショップ!

小さなスプーンや額縁の製作などではなく、解体したり、壁を作ったり、床を貼ったり、塗装したり、左官したり、タイルを貼ったり、家具を作ったり。

リアルな現場を目の前にしながら「実践的な技術」や「建物の構造」などを習得!

独学だからこそ気付く、素人にも優しい「作業道具の使い方」も!

アパートメントで培った「製作スキル」や「デザイン」「リノベーションのやり方」などを伝えたい!

 

そして、沢山の汗をかいて ホコリにまみれながら体験することで、 「生きてる実感」みたいなものを感じたり!

泊まりながら数日 工事に関わることで、自分の作った場所、作業した箇所の達成感を感じてもらいたい!

 

作業後は、お風呂に入って汗を流し、みんなでご飯を食べながら、お酒を酌み交わす!

人生の悩みや夢などを語り合い、 そして、何かモヤモヤとした毎日を変えるヒントを見つけたり!

 

 

そして、ワークショップを通して「自分でも作れるんだ!」という意識を改革をしてほしい!

ここでたくさんの「0→1」を経験して、その後「自分の部屋」や 「自分の店舗」「自分の家」など、自分でDIYする人が増えていってほしい!

 

そんなワークショップをやりたい!!!

 

 

 









 

 

そして「動き出す」!!!

まずは、このやりたいことを「どうしたら具現化できるか?」「そして何が必要か?」「どんな場所がいいか?」 書き出してみる。

 

 

①自由に改装できる建物や空間が必要。

 

②すぐに完成しない中規模サイズの場所が良い

 →(参加者が、工事の途中経過中に何度も足を運べて、色々と体験できるように)

 

③なるべく所有するのにコストが少ない場所であること

 →(長く継続性させれるように)

 

④完成に納期の期限がないこと

 →(依頼されたリノベーション物件ではダメ)

 →(ワークショップを、出来るだけ沢山の人に、楽しく丁寧に時間をかけて教えられるように)

 

⑤完成後 その空間を「収益の見込める事業」にできる場所 . 立地 . 広さであること 

 

⑥非日常的な場所 

 →(日々の雑踏から離れ、環境を変えることで、考え方や自分を見つめ直すキッカケになるように)

 

⑦県内外の高速道路アクセスが良い所 

 →(ターゲットは全国)

 

⑧自分たちの表現に合う、ワクワクするような場所や建物であること

 →(軸にある表現したいデザインを、具現化できる場所でないと意味がない)

 

 

 

 

 

 

この書き出した内容を総合して生まれるワークショップで創る空間は「ホテル」!!!

舘山寺で断念したホテルが、またここで再燃!

 

 

 

しかし、舘山寺での空家ホテルは、もう可能性はない。

とすると、他の候補地は… 。

 

空家が多くて、所有するのにコストが低く、非現実的な場所… 。

..

..

..

..



 

そうだ! 天竜だ!!!

 

 

そして早速動き出す!

 

まずは天竜の情報を仕入れにいくことに!!





最初に声を掛けたのは「山ノ舎」の中谷くん。

天竜二俣でカフェを経営する彼は、東京からのUターン。

天竜二俣を活性化できないかと、地元に戻り、2年前にカフェをオープン。

地元の商店街や、商工会議所、区役所などの行事にも積極的に参加して、町を盛り上げる中心的な人物になっている。

 

何度か面識のあったので、彼と連絡をとり、天竜の空家状況や移住者の話や、天竜の問題点など色々と話を聞いた。

 

 

 

とりあえず、動いてみる。

 

まずは空家探しから。

まずはインターネットから検索してみることに。

しかし、中山間地域の不動産情報は本当に少ない。

市の移住推進の専門HPの物件サイトでは7件しか掲載されていなかった…

 

これだけ、世間のニュースで、中山間地域の空家が問題化しているのに、この掲載数…

色々話しを聞いているうちに、空家問題がなかなか解決しない理由が分かってきた。

 

まずは、不動産屋。

中山間地域は売物件にしろ賃貸物件にしろ、価格が低い。

仲介%が法律で決まっているため、安い物件ほど利益が少ない。

仲介するのに同じ手間がかかるなら、高い価格の物件を沢山扱う方がメリットが多い。

だから、価格の安い中山間地域の空家情報は、世間になかなか出回らない。

 

もう1つは、実際の空家物件の持主側の問題。

それは「どこの誰とも分からない人に貸すなら、空家のままでいい。」

という考えの人が多いことだ。

空家の持ち主は、その地域に住んでいないことが多いそう。

だが、近所の人との繋がりは続いている。

ヘタに問題のある人に貸してしまったりすると、近隣に大きな迷惑がかかる可能性がある。

だから、ヘタに貸すより、空家のままの方が良いとなる。

 

さらに、借りる人買う人も少ないので、中山間地域の空家情報はさらに埋もれていく… 

という悪循環なのである。

 

 

 

とは言っても、物件を見つけないと先に進めないので、インターネットの少ない情報と、あとは実際に天竜区で足を使って空家を探してみることにした。

しかし、天竜区といってもそうとう広い。

 

 

ここで少しだけ天竜区の説明をしておく。

浜松が政令指定都市になるまでは、天竜と言えば天竜市のことだった。

政令指定都市になって山間地域が浜松市になり、天竜市が天竜地区、それぞれの町も、佐久間地区、水窪地区 春野地区、龍山地区なった。

そして天竜区という巨大な区に。

その広さは、浜松市全体の半分以上をしめる。

あまり奥に入っていきすぎても、アクセスが悪いと思い、天竜二俣を中心に20km圏内の「熊」「龍山」「阿多古」「春野南」付近で探すことに。

車で走ること丸1日…









 

そして、見つけた沢山の空家!

ポテンシャルを感じざる得ません!!

学校や幼稚園、飲食店、民家、診療所、ガソリンスタンドなど。

面白い物件が目白押し!!

 

 

 

 

 

しかし、ここで引っかかる問題。

具現化する為の条件「②すぐに完成しない中規模サイズの場所が良い」だ。

民家や診療所など、一軒家は建物が面白くても、あっという間改装が終わってしまう。

最低でも、ゆっくり作業して4〜5年くらいは、教材として改装できる規模がいい。

 

かといって、学校などは公共施設のため、個人が自由に利用できる可能性がかなり低い。

しかも、ホテルとなると、給排水、電気、空調など、ワークショップではどうにも出来ない部分のコストがかかりすぎてしまう…

 

今回の探索では、明確な成果を上げることができなかった…

 

 

でも、今回見つけた空家は、vol .2   vol .3のワークショップスペースの候補にできそうだ!

 

 

だがやはり、最初に手掛ける場所は、このプロジェクトのシンボル的な場所にしたい!!

 

 

 

 

 

そして、数日後….

山ノ舎の中谷くんから連絡が。

「佐久間に古い旅館が売りに出てますよ!」 

 

おっ!?

旅館!?

いいかも!!! 

 

 

「しかも200万円で売りにでてますよ!」

えっ!!  200万!!!  安過ぎ!!!

 

 

 

よし!! 佐久間へ行こう!!!

 

 

佐久間へ行くのは、多分このときが初めて。

前回、探索した1番遠い熊地区(天竜二俣より20km)よりさらに奥。

天竜二俣より45km。

時間にすると二俣より約1時間15分。 結構遠い…

アクセス的にはかなり厳しそう…


 

一応、携帯のナビで調べてみることに。

すると、距離は少し長くなるが、第2東名から「三遠南信道」という新しい高速道路が出来ていた。

まだ全線開通はしていなかったが、途中まで完成していた。

最終的には長野の飯田まで繋がるのだそう。
(噂では10年後らしい)

しかし、この「三遠南信道」を使うと、現在の終点の鳳来卿I.Cまで25分、高速を下りてから佐久間まで約20分の計45分。


 

これは!!!

 

ワークショップ ターゲットは全国を対象にしているから、高速を下りて20分はかなり便利。

しかも、「三遠南信道」だけは、交通量が少ないし、今は料金無料!

ほとんどストレスなく走れる。

 

しかも、鳳来卿I.Cから佐久間までの道が、結構な山道。

もちろん舗装はされているが、場所によっては、車1台分の道幅しか無い場所も。

沢山のカーブミラーが設置してあり、対向車がくればお互い譲り合う。

そして、簡単に手をあげてお礼をいう。

誰に教わることも無く、自然とお互いに「お礼」をいう。なんか素敵な光景。

 

人工的な高速道路から、人情味のある山道! そのギャップもすごくいい!

高速下りてすぐ辿り着けるより、非日常的な秘境感をかき立ててくれる20分間!

 

 

 

 

 

そして、不動産屋さんとアポをとり、後日、建物内を見せてもらえることに!

 

 

 

 

着いてみると、そこは古い商店街の一画にあった。

駐車場の場所を聞くと、駐車場はないらしい…

 

 

道路脇に車を止めさせてもらい、建物内をみせてもらうこと。

建物は木造。

建物横の側道は、奥に向かって下り坂道になっている。

 

建物内は、増築増築で増えたらしく、縦にも横にも少し迷路のような感じがした。

細かい部屋がたくさんあり、建物の中心には中庭があった。

少し荒れていたけど、素敵な感じ。

細かい部分で素敵なところはあったけど、収集の無い感じ。

木造なので、外壁などの傷みもひどく、ここでは建築的なコストがかかりすぎてしまう。

駐車場がないのが、さらに致命的。

 

解体するという話も出ているらしく、古材としてみれば、かなりの素材!

できたら、建具や床材などをRebilding Centerのようにレスキューできたら!と思った。

 

 

 

 

やはり今回もビビッっとこなかった….

 

 

 

 

かなり期待していただけに、かなりのショック。

高速アクセスも申し分なかったのに…

 

 

「せっかく佐久間まできたのだから、また空家探しをしながら帰ろう…」

少しうなだれた気持ちのまま、帰り道を進んだ。

 

 

 

 

すると、かなり錆びれた旅館の看板が道路脇に立っていた。

 

「他にも旅館があるんだ。でも、どうせまた錆びれた旅館だろう…」

と思ったが、まったく収穫が無さ過ぎることに、若干ヤケになりながら、少し気になったので、見に行ってみることに。

 

この先にあるの??と疑いながら、畑の脇の道のようなところを進む。

 

道の脇に1軒の民家。この先は私有地?という雰囲気。

それでも、「怪しいやつ」と思われちゃうんじゃないかと気にしながら、恐る恐る進む…

 

すると先に、また錆びれた看板が…


 

「清流荘」

 


 

その看板の先に目線をやる。

そこには白っぽい建物が...


次の瞬間!!!

 

「ビビビッ!!!!」


 

突然 心にカミナリが落ちた!!!!!

 

 

 

 

 

 

 





 

 

 

 

 

 

 

エピソード5 【  出会い  】


 

前回の話を少しおさらい。

 

お目当ての旅館物件に撃沈し、帰りの道中で見つけた錆びれた看板。

その先に向かってみた。

 

すると先に、また錆びれた看板が…

 

「清流荘」

 

 

 

 

 

 

駐車場らしきスペースがあり、その先に車1台分の幅のスロープの坂道が続いている。

 

車を降りて、恐る恐る歩いて坂を上っていく。

 

広葉樹がたくさん植えられている。

 

その木漏れ日の隙間から建物が見えてきた!

 

「ビビビッ!!!!」

 

突然 心にカミナリが落ちた!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

その木漏れ日の隙間から見えてきた建物は、全く予想もしていなかった建物だった!!

このエッジの効いた「昭和モダン建築」のような好みの建物!!

この時は、まだ全体像が見えてなかったが、このアングルだけで、胸のドキドキが止まらない!!

ヤバい!!!! ここはヤバい!!!

 

 

 

坂道の横には、綺麗な川も流れている!





宝箱を見つけたようなテンション!


鳴り止まない鼓動を抑えながら進む。



おお!!!

「UCC」の昭和な看板 !! ここは喫茶店みたいだ!

階段が付いていて、ここからも入れそうだ!

 

 

 

 

まだ先がある!さらに進む!!








おおお!!!



 

平屋のようなRC造の建物が!!!

 

ロータリーみたいになってる!!! かっこいい!!

 

建物全体は、上から見るとL字のような形。

 

形がイビツなところもまたカッコイイ!!!   ヤバい!!






 

 

 

 

 

 

 




入口を発見!!

「さくま自然休養村管理センター」と書いてある!

 

人の気配はまったくない。

貼り紙がしてある。3年前に閉館したらしい。


 

 

 

「裏側にも回ってみよう!!!」

 

もと来た道を少し戻り、裏側へ!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おおおおお!!!

 


なんだここは!!!

めちゃくちゃカッコいい!!

頭陀寺のアパートメントストアの建物にも通ずる雰囲気!

まさにアパートメントの進化形として、これ以上ない建物だ!!

 

ココしかない!!!! なんとかココを使えないか!!!

 

この帰り道、いや、この日1日ずっと興奮がさめなかった!!





 

 

 

 

 

 

翌日早速、ここを管理している役所に連絡!

また、翌日も佐久間へ。

町役場で、管理担当者さんと話をさせてもらいに。

 

すると、担当者さんが所要で外していて、10分くらいで戻ります。とのこと。

10分間、興奮のドキドキで、落ち着かなかった。

 

 

10分後… 担当者さんが見えた!

「現状どのような管理になっていて、今後どのようになっていくのか?」と聞くと、

 「詳しいことは分からないので、区役所の方で聞いて下さい」と… 

 「なんだよ… これは 役所のたらい回し作戦か…」などと、心で思ったりもしたが、

 

次の瞬間、思っても見ない言葉が!!!

 

 

 

 

「建物の中見ます?」

 

 

 

 

 

えっ!! 本当ですか!!?   ぜっぜひ!!

 

話を聞くだけのつもりが、向こう側から「中見ます?」だなんて!

なっなんと!! 嬉しいー!!!

 

「役所のたらい回し作戦か!?」 なんて思って神様すいません…. 


 

 

 

 

そして、建物を見に役所の方と清流荘に向かう。

 

ワクワクしながらいざ建物内へ!!!








 

 

 

 

 

 

 

入ってすぐ、ココはロビーみたいだ。

待合い椅子も可愛い!






奥に進む。








ココは喫茶店だったみたいだ!

カウンターがいい感じ!

天井の板張りもいい感じ!

なぜかミラーボール!?









廊下の途中には、大きな和室!

 休憩所か団体用の食事会場だったところだろう!











客室は、いたってシンプル!

でもコンパクトな感じで改装しやすそう









さらに2階へ!

階段の手すりも可愛い!

シャンデリアの昭和な感じも、かなり好き!











2階にも客室があり、他にも小会議室などがあった。

そして、ここは大会議室!

「あッ! 金屏風がある!!」

昔は、結婚式もここで上げていた人も多かったそう!

 

天井の板張りもいい!

 








 

 

 

2階のベランダ外のデッキスペース!

ここもいい感じ!


 

 

 

 


 

 

 

 

さらに見晴らし台という、展望タワーのような3階もある!

そこにも上ってみる!

 

 

 

おおお!!!

そこから見える佐久間の景色は最高だった!!

外観も素敵!! 内装もいい感じ!!

 

もう、ココ以外考えられない!!!

 

 

 

 

 

 

 

そして今、ここを借りられるように、話を進めている!!

 

まだ、なんとも言えないが、良い風が吹いている気がする!








 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ちきれず、先日もここを訪れた。

 

思った通り、広葉樹が見事に赤く染まっていた。

 

 

前回は、テンションが上がりすぎて、あまり見ていなかった周りの風景。

 

ここに住む 町の人には、いつもの景色だろう。

 

だが、普段見慣れていない僕たちには、すべてが美しく、すべてが最高の景色に感じられた。














エピソード6 【  社会と向き合う  】

 

 

今回の清流荘の発見で、妄想だったプロジェクトが一気に現実化に近づいた。

 

だが、建物を借りるには、まだ沢山のステップを踏まなくてはならない感じだ。

 

これからは、自分の想いだけでは進まない。

 

たくさんの方の力を少しずつ借りながら、確実に1つ1つクリアをしていくつもり。

 

そして「必ず清流荘プロジェクトに繋げてみせる!」という固い気持ちが、より強くなっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のプロジェクトを考える中、今まででは 考えないことを同時に考えていた。

それは、「社会との向き合い方」。

 

先日のブログにも書いたが、今までの自分は「自分」というのが中心にあった。

それは、これからも基本変わらないのだが、

 今回、「教える伝える」というキーワードが加わり、「人と向き合う」ということが、自分の中に生まれた。

そこには、自分も含め、「悩み」だったり、「ストレス」だったり、「生活」だったり、「お金」だったり、「夢」だったり。

人はみんな、色々なことを抱えながら生きている。

おこがましいが、そういうものと向き合ったことで、そこに、今の自分がどう関われて、少しでも何かヒントとなるキッカケを与えられる存在になれないか?

そんなことを考えるようになり始めていた。

 

 

毎日の生活… 

朝起きて、仕事して、食事して、寝る。 休みの日には、家族や恋人、友人と遊ぶ。

普通に暮らしていれば、普通に幸せで、それほど不便ではない世の中。

 

そんな日々の中で、たくさんの人が幸せを感じているだろう。

 

 

でも、世の中には色々な人がいる。

当たり前の日々に、違和感を持ちはじめた人。

小さなコミュニティに、息苦しさを感じはじめた人。

仕事とは何か?と考えはじめた人。

自分の人生の意味を考えはじめた人。

昔の夢を追いかけたくなった人。

やりたい夢があるけど、自信が無い人。


 

でも、どうすればいいか? 何をすればいいか? どうやったら変わるのか?

ちょっと大げさかも知れないが、そんな人たちにも来てもらいたい と思っている。


 

 

滝に打たれたり、寺で修行したり、勉強会をしたり、プログラムをこなしたり、という訳ではない。

 

ただ単純に、みんなで汗をかいて「達成」を目指して、共に作業して、笑って、ゴハンを食べて、のんびりして。

日々の生活から少しだけ離れて、ちょっとだけ別の生活に身を置いてみる。

目的や悩みは違えど、共に過ごす中で、凝り固まった自分の考え方の視点を変えさせてくれる「何か」を見つかるかも知れない。

 

このプロジェクトの存在を知って、何かを感じて「参加」する。

それは、世間からみれば「小さな1歩」かも知れないが、実は、今の自分を変える「大きな第1歩」に繋がっているかもしれない。


 

このプロジェクトは、そんな場でもありたいと強く思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、さらに大きい話。

 

「教育」「医療」「福祉」「少子化」「限界集落」「エネルギー」「AI」「食料」「空家」「戦争」…. 

人だけでなく、世の中にもたくさんの問題がある。

自分の知らない問題もたくさんあるだろう。

 

 

そんな世の中の問題に対して、自分は何が出来るか?

このプロジェクトで、どんな問題を、どう変えられ、どう広げ 伝えられるだろうか…


 

 

 

 

 

今まで、高度成長期から物作りが盛んに行なわれてきた。

現在、幸せにも物が溢れた時代になった。

安価で良いものが多く流通し、特別、生活に不便することは少なくなった。

 

しかし今は、会社の利益や社員の養う為に、過剰な生産が増えてきている気がする。

供給が需要を超えているイメージだ。


 

今までは「古いモノを壊し、新しいモノをつくる時代」だった。

これからの時代は、

「今あるものを、いかに工夫して再構築し、新しい価値観で見せられるか? 」

そんな時代に流れつつある気がする。


 

それでもまだ、新築件数は増えている。

雇用を生み出すには、新築の方がメリットが多い。

 

今後「空家」はもっともっと増えるだろう。

「空家を取り壊す」という、単純な選択肢だけではなく、もっと選択肢を増やしたい。

 

現在、マンションや中古住宅のプロによるリノベーションが増えてきた。
自分も含めて。

もちろん、プロにお金を払って作ってもらうことは、早く上手く格好良く作ってもらえるが、 と同時に、沢山の借金も付いてくる。


 

「35年の住宅ローン」

 

30歳でローンを組んでも、完済が65歳。

人生の大半を、借金を抱えて生きる日々。

夫婦共働きで、日々の生活にも余裕はなくなり、子育てするのも、ままならない。

住宅ローンでの自己破産も聞くようになったこの時代。

この先、今の仕事が、30年後もあるかどうかなんて、誰にも保証できない。

 

 

 

 

だからこそ「空家(実家)を自分で改装する」という選択肢を広めたい!

「自分で改装できる」ということは、 空家を安く購入して改装したり、実家を利用して改装したりすることで、コストを抑えることに繋がる。

コストが抑えられるということは、金銭的な「生活への圧迫」を軽減できる。

軽減されたお金を、子育てに充てることや、家族旅行の費用にしたり、自分たちに投資することもできる。

それは、生活に余裕が生まれるということ。

余裕があるということは、より子供を作りやすい環境を作るということにも繋がる。

 

そして、共働きが少なくなれば、「親が 自分の子供の面倒を見れる」ということ。

30名の生徒に先生1人という「一括教育」の学校に預けきりの教育ではなく、「親が子を見る」という単純な教育こそ、子供の個々の個性を生かすことに繋がると思う。

 

そして、親のDIYを見て育つ子供たちは、小さな頃から「ものづくり」に自然と接することで、プロに頼らなくても、修繕や製作することに抵抗がない子供たちが育ってくれるはず。

 

 

 

改装には時間と労力が かかる。

でも、自分たちで作るからこそ、愛着が沸き、長く住み続けられる。

家族でDIYする時間も「家族の思い出」として残り、子供の代まで長く愛される家になるのではないかと思う。

長く愛される家は、たくさんの思い出が詰まっているかどうかで、決まるものかもしれない。

それこそが、空家を増やさないようにするための、1番の近道なのかも。

 

 

 

 

そのためには、まず「自分でも改装が出来るんだ!」という意識改革が必要である。

それと同時に、基本的な道具の使い方や危険性を学んだり、建物構造を学んだり。

建築を学ぶということではなく、実際に改装現場に関わることで、自分の住まいを作るために必要なことを学ぶ場。

そんな「意識改革」と「住まいをつくる技術」の習得ができるワークショップ!

 

 

単純な、その日だけ楽しむワークショップではなく、人生における「家」「生活」「お金」「生き方」を考えるキッカケもつくりたい。

みんなが「家」を買っているから、自分もそろそろ… ではなく、

自分の人生に、それはちゃんと必要なことで、それだけの借金を抱えるだけの価値があるのか?

本当に必要なことを見極め、この先の未来もしっかり見つめ、何が起きてもちゃんと受け入れられる覚悟をもつこと。


「家を買う」ということは、「自分の人生を使う」ということ。


 

 

この先、10年20年そして50年… さらに「激動な時代」なっていく。

 

これからは、「お金や物で人生をつくる時代」から、「自分の経験値や技術で人生をつくる 時代」に変わっていくと思う。

周りに流されず、しっかり自分で考え、自分の答えを持つ。

たくさんの経験値を持ち、それを磨いていくことで、新しい時代の波にも、対応できるような人間になる必要があると思う。

難しく考えず、自分の気になったことだけでも、勇気を出して1歩に踏み出せば、それは必ず「人生の選択肢」の幅を広げ、人生を少しでも明るく楽しく幸せになることに繋がると思う。

 

 

 

 

少し話が大きくなりすぎたが、実際に自分が体現し、生まれた考え。

だからこそ、温度を持って伝えられればと思っている。

 

 

ちょっと熱くて重い話になってしまったが、

単純に「ものづくり」をしたい方にも、たくさん来てほしい!



最後に。

自分ができる範囲を見定め、その時々のベストをもって人生と向かい合う。

その時々のベストからなる「選択」と「行動」を続けた上で起こる「結果」は、必ず自分のためになると僕は思う。

未来を不安がっても、何も生まれない。

今、目の前にある1歩だけが「未来」に繋がってるのだから、「今のベスト」をしっかり見つけよう。